
愛犬との生活を豊かにするために、しつけは欠かせません。お手は最も基本的なしつけの第一歩で、正しい教え方を知らないと、愛犬も飼い主もストレスを感じてしまいます。
この記事では、愛犬にお手を教える理由やタイミング、具体的な方法などを詳しく解説します。記事を読んで、愛犬と信頼関係を深めつつ、楽しみながらお手を教えましょう。お手を教えるコツは、短時間で楽しく繰り返し練習することです。愛犬の性格や発達段階に合わせた方法で、無理なく教えてください。
愛犬にお手を教えるべき理由

愛犬にお手を教えるべき理由は、以下のとおりです。
- 飼い主との信頼関係を深められる
- 健康チェックがしやすくなる
- 社会性・しつけの基礎になる
飼い主との信頼関係を深める
愛犬と幸せな生活を送るためには、信頼関係の構築が大切です。お手のようなシンプルなしつけを教えれば、相互理解が深まり、愛犬との信頼関係が構築可能です。お手のトレーニングを通じて、スキンシップなど、愛犬とのコミュニケーションが自然と増えます。成功体験を味わえば、愛犬の自信にもなります。
大型犬と比べて小型犬は、飼い主との絆を重視する性格です。お手のような簡単なトレーニングを通じて、飼い主との絆が生まれます。信頼関係を築くためには無理強いせず、愛犬のペースを尊重することが大切です。愛犬にポジティブな方法で教え、成功体験を積み重ねましょう。
健康チェックがしやすくなる

お手を教えると、愛犬の前足に定期的に触れる機会が増え、健康チェックがしやすくなります。お手は単なる可愛いしぐさではなく、健康管理の重要なツールです。以下のような健康チェックが自然にできます。
- 爪の長さや肉球の状態
- 前足の関節の動き
- 皮膚の湿疹や発赤
- ノミやダニなどの寄生虫
- 足裏の異物
小型犬は体が小さいため、健康状態が急速に悪化します。わずかな変化にも気付くため、お手を通じて、日常的に前足に触れましょう。お手の動作に慣れると、獣医さんが診察するときも、落ち着いて前足を差し出せるようになります。
社会性・しつけの基礎になる
お手を教えることは、しつけの基礎となるだけでなく、愛犬の社会性を育む重要なステップです。愛犬は飼い主の指示に従う習慣が身に付き、ルールを守る意識が芽生えます。愛犬が社会性を身に付けるメリットは、以下のとおりです。
- 人や他の犬との適切な距離感
- 公共の場での行動コントロール
- 問題行動の抑制
お手ができると、より複雑なしつけへとスムーズに移行できます。
愛犬にお手を教えるタイミング

愛犬にお手を教えるタイミングは、以下を参考にしてください。
- お手を教える理想的なタイミング
- 発育や性格に応じたタイミング
お手を教える理想的なタイミング
お手を教える最適なタイミングは、愛犬が生後2〜3か月の頃です。基本的なトレーニングを始めるために適した年齢で、新しい動作を覚える能力が高い時期です。理想的なお手のトレーニングタイミングは、以下を参考にしてください。
» 小型犬の年齢を人間換算でチェック!健康管理を徹底解説
- 食事前
- 静かな環境
- 犬の機嫌が良いとき
- 飼い主に余裕があるとき
- 報酬の準備
お手を教える前に、飼い主との信頼関係が必要です。愛犬があなたに慣れ、待てなどの簡単なコマンドを理解できるようになってから、お手に挑戦しましょう。
発育や性格に応じたタイミング
お手のしつけは、愛犬の発育段階や性格に合わせて始めてください。子犬期(2〜4か月齢)は学習能力が高く、基本的なしつけに最適な時期です。成犬になってからでも、十分に教えられます。若い犬ほど早く新しいことを覚えられるため、できるだけ早く始めてください。
愛犬の性格によっても教え方を変える必要があります。臆病な犬は、安心できる静かな環境で、少しずつ慣らしましょう。活発な犬は、短い時間で集中して教えると効果的です。頑固な性格の犬には、根気強く教えてください。興奮しやすい犬は、落ち着いた状態になってから教え始めましょう。
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疲れているときや体調が悪そうなときは、お手を教えるのを避けてください。
愛犬にお手を教える具体的な方法

愛犬へのお手の教え方に関する具体的な方法は、以下のとおりです。
- お手を教える前に必要な準備
- 基本的なお手の教え方
- 遊び感覚で教える方法
- シェイピングを取り入れる方法
お手を教える前に必要な準備
愛犬にお手を教える前に、準備を整えましょう。トレーニングがスムーズに進み、愛犬もストレスなく学べます。
愛犬が喜ぶご褒美を用意しましょう。小型犬の場合は、小さくて食べやすいおやつが適しています。トレーニング専用の高価値なご褒美を用意する方法もおすすめです。以下のポイントに注意して、トレーニング環境を整えてください。
- 静かな場所
- 出入りが少ない環境
- 落ち着けるスペース
- おもちゃの片付け
トレーニングの時間も重要です。愛犬が空腹の時間帯を選ぶと、ご褒美への反応が良くなります。トレーニングに使用する以下の道具も準備してください。
- クリッカー
- リードや首輪
- ハンドシグナル
- 声かけの言葉
基本的なお手の教え方

正しい方法でお手教えると、愛犬はすぐに覚えられます。基本的なお手の教え方は、以下のとおりです。
- おやつを手に持つ
- 犬の前でお手と声をかける
- 手のひらを差し出す
- 前足を乗せたらすぐに褒める
- 反応がない場合は優しく誘導する
短時間で集中して教えることがコツです。1回のトレーニングは5分程度にとどめ、1日に数回繰り返しましょう。最初は近い距離から始め、愛犬が慣れてきたら徐々に距離を広げてください。犬は叱られると不安になり、学習意欲が下がるため、失敗しても叱らないことが大切です。
愛犬がお手を理解したら、おやつなしでも反応するよう練習してみましょう。成功率が高くなったら、いろいろな場所や状況でも練習すると、どんな環境でもお手ができるようになります。
遊び感覚で教える方法
遊び感覚でお手を教えると、愛犬も飼い主も楽しみながら学習できるため、上達が早くなります。具体的には、以下のような方法があります。
- おもちゃを使用する
- ボール投げの前に要求する
- 手のひらタッチゲームをする
- おやつ探しゲームをする
- 家族で円になる
- 音楽に合わせる
小型犬は好奇心旺盛な子が多いため、遊び感覚のトレーニングがとても効果的です。お手の成功時には、大げさなほど喜んであげましょう。愛犬が「これは楽しいゲームだ」と認識して、積極的に参加してくれます。散歩の途中など、日常的に遊びの一環としてお手をさせる練習もおすすめです。
愛犬が飽きてきたら無理に続けず、短時間で終わらせてください。楽しい気持ちで終われば、愛犬は次回も喜んで参加してくれます。
シェイピングを取り入れる方法
シェイピングは、愛犬の自発的な行動を促し、段階的に進めるトレーニング方法です。シェイピングでは、愛犬が自分から行動するのを待ちます。少しでも前足を動かしたらすぐに褒めて、おやつを与えてください。徐々に基準を上げていき、少し足を浮かせる、少し高く上げるというように段階的に教えます。
クリッカートレーニングと組み合わせると、より効果的です。クリッカーの音で、正解のタイミングを正確に伝えられます。クリッカー以外にも、声かけとおやつだけでも効果は充分です。
強制されるのではなく、自分から行動して褒められる体験を通じて、愛犬は喜んで学習します。愛犬が混乱したら、一度簡単な動作に戻しましょう。焦らず愛犬のペースを尊重することが成功の鍵です。
【犬種別】お手の教え方

犬種別のお手の教え方は、以下のとおりです。
- 小型犬への教え方
- 大型犬への教え方
小型犬への教え方
小型犬は体が小さく手を上げる動作が自然にできるため、教えやすいメリットがあります。小型犬の場合、飼い主との目線の差が大きいため、最初は床に座って教えましょう。小型犬は体温調節が難しいため、暑すぎず寒すぎない環境でトレーニングをしましょう。
» 小型犬の種類や特徴、性格を解説
褒める際は、愛犬が驚かないよう、大げさすぎない声や動きを心がけてください。小型犬特有の「立ち上がりグセ」がある場合は、お手の動作と区別できるよう、合図を使い分けましょう。お手の動作と抱っこをしてほしいときの動作を混同しないよう教えてください。
トレーニング中は小型犬の関節に負担をかけないよう姿勢に注意し、無理のない範囲で練習を続けましょう。
大型犬への教え方
大型犬へのお手の教え方には、以下のポイントが重要です。
- 犬の視線の高さ
- 適切な距離
- 優しい誘導
- 座った状態からの開始
- 短い練習セッション
教える際は、愛犬を座らせた状態から始めましょう。手は、愛犬の目線より少し低めに位置させると、手を認識しやすくなります。大型犬は力が強く、お手ができるまで時間がかかるため、急かさず辛抱強く教えましょう。成功した際は、声をかけながら頭や胸を優しくなでてください。
愛犬にお手を教えてもうまくいかないときの対処法

愛犬にお手を教えてもうまくいかないとき対処法として、以下の場合について解説します。
- 空振りする・すぐに手を引く場合の対処法
- 逆の手を出す・噛むなどの困った行動への対処法
- 前足に触れられるのを嫌がる場合の対処法
空振りする・すぐに手を引く場合の対処法
空振りしたり、すぐに手を引いてしまったりする場合は、トレーニングの時間を短く区切ると効果的です。手を愛犬の目線に合わせてみましょう。ご褒美を以下のような香りの強い、高価なおやつに変更すると、愛犬のモチベーションが上がります。
- チーズ
- ゆでた鶏肉
- ジャーキー
- レバー系のおやつ
最初は手に注目するだけでも褒めるなど、小さなステップごとの成功体験の積み重ねが大切です。愛犬の前足に優しく触れて持ち上げる補助をすると、動作を理解しやすくなります。手の形や高さを一定に保ち、動作を安定させてください。
愛犬が疲れているときや空腹でないときは避け、元気なときにトレーニングをしましょう。
逆の手を出す・噛むなどの困った行動への対処法

愛犬が逆の手を出したり、噛んだりする理由は、以下のとおりです。
- 過度の興奮状態
- 恐怖や不安
- 遊びと勘違い
- 混乱
噛む行動に対しては、即座に「痛い」と小さな声で伝え、トレーニングを中断しましょう。大きな声で怒ると、愛犬が怖がってしまいます。逆の手を出す場合は、正しい手を示して誘導してください。ハンドターゲット(指定した手に鼻先をつける訓練)も取り入れてみましょう。姿勢や位置を変える方法も有効です。
改善が見られない場合は、トレーナーや獣医行動学の専門家に相談しましょう。愛犬に合った適切な対処法を見つけられます。
» 犬の噛み癖の主な原因や噛み癖を直す方法を紹介!
前足に触れられるのを嫌がる場合の対処法
愛犬が足を触られることに抵抗を示す主な理由は、不安や恐怖、過去の嫌な経験や痛みなどが挙げられます。リラックスしているときを選び、静かな環境で始めてください。いきなり足に触れるのではなく、愛犬が安心できる場所で少しずつ慣らしましょう。以下の方法が効果的です。
- 声をかける
- 短時間の接触を行い、褒める
- 時間を徐々に延ばす
- 全身から徐々に触れる
触れる際は愛犬の反応を注意深く観察し、嫌がる場合は中断しましょう。無理強いは逆効果になるため、愛犬のペースの尊重が大切です。極端に嫌がる場合は、痛みや過去のトラウマが考えられます。心配な場合は、獣医師に相談してください。
愛犬にお手を教えるときの注意点

お手を教えるときの注意点は、以下のとおりです。
- 無理やり教えない
- 家族全員でコマンドを統一する
- ストレスサインを見逃さない
無理やり教えない
愛犬にお手を教える際、無理やり教えてはいけません。愛犬にとってストレスになり、学習効果が低下します。愛犬が嫌がっていたり、恐怖を感じていたりするようなら、すぐに練習を中断しましょう。愛犬の性格や個性に合わせたアプローチも大切です。覚える速度には、個人差があるため、焦らず見守ってください。
家族全員でコマンドを統一する

家族全員が同じ言葉や動作を使うことが大切です。家族によってお手や手、ハンドなど違う言い方をすると、犬は混乱してしまいます。家族で統一すべき言葉や動作のポイントは、以下のとおりです。
- コマンドの言葉
- コマンドを出すときの手の動き
- ご褒美の与え方
- トレーニングの基本ルール
犬は言葉の意味よりも、音の響きと特定の行動を結びつけて覚えます。家族によって異なる言葉を使うと、学習効率が低下します。子どもがいる家庭では、子どもにもわかりやすく説明し、同じ言葉を使いましょう。家族みんなが、犬のトレーニングに参加することが最も大切です。愛犬との絆が深まり、進捗も共有できます。
ストレスサインを見逃さない
愛犬の以下のストレスサインへの気付きが、トレーニング成功の鍵となります。以下のサインを見逃さないようにしましょう。
- 唸り声や歯を見せる
- 舌の頻繁な出し入れをする
- あくびが増加する
- 顔を背ける
- 目を大きく見開く
- 耳を後ろに倒す
- 体が硬直する
- 足の引っ込みをする
- 過度のパンティング(口を開けて早く呼吸する状態)をする
大好きなおやつに興味を示さなくなったり、訓練中に急に眠そうにしたり、落ち着きがなくなったりする場合は、注意しましょう。ストレスサインに気付いたら、すぐにトレーニングを中止してください。無理に続けると、愛犬がお手自体に嫌悪感を抱いてしまいます。
愛犬が簡単にできる別の動作を指示し、できたらおやつを与えて、楽しく終われるよう心がけましょう。継続的にストレスサインが見られる場合は、トレーニング方法を見直すか、動物行動の専門家に相談してください。
まとめ

愛犬にお手を教えることは、単なるしつけ以上の価値があります。お手は飼い主との信頼関係を深める、基本的なしつけの土台となる技です。お手を教える開始時期は、子犬期(2〜4ヶ月頃)がおすすめです。
愛犬の性格や発育状況に合わせて、柔軟に対応する姿勢が大切です。お手の教え方がうまくいかない場合も焦らず、愛犬のストレスサインに注意しながら根気よく続けましょう。